謎の改造こま
小学生のころ、例年冬休み明けくらいから春先まで、学校で「こま回し」が流行した。こまは直径が七、八センチから一〇センチほどの碗型で、きめの細かい木でできた重厚なものだった。上面には青紫と赤の同心円の模様が美しく描かれている。荒縄のような紐の手元は房になっており、これでこまを叩いて回転の勢いを増す。
全国的にありふれたこまだと思っていた。これが「大山こま」という神奈川県独特のものだと知ったのは、去年のことだ。少し興味が湧いて、買ったもののうまく回せず忘れていたこまを、何十年かぶりに出した。
ところがそれは、弟の手で(もちろん小学生時分のことだ)謎の改造をほどこされていた。心棒の先端にはめたベアリング玉は、摩擦を軽減し、磨耗を防ぐためだろう。だが、本体にすき間なく巻きつけたビニールテープは、何のまじないか?
大山こまは喧嘩ごまだ。それも側面を当てるだけでなく、回っているこまに上から叩きつける使い方をする。ぶつけぶつけられたこまが割れないようにテープを巻くのだと、弟は言った。
せっかくなのでひもを買ってきて、昔回せなかった大山こまを久しぶりに回してみた。二回に一回くらいは回るようになったが、思い切りが悪いせいか勢いがなく、小学生と喧嘩しても勝つ自信はまったくない。
(2017年2月・片岡 夏実)
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