プールで団子

 前にも書いたが、鎌倉では夏休み前、小中学生に市営プールの無料利用券が配られる。これがあれば夏じゅうプールに入り浸ることだってできる。
 私もプールにはそこそこ通った。もっとも真面目に泳ぐことはまれで、一〇メートルくらい泳いで面倒になり足をついてしまったり、底でヒラメのようにじっとしていたり、水面にただぷかぷか浮かんでいたり、遊んでばかりいた。子どもはそうして遊びながら泳ぎを覚えるのだ、と偉そうに言ってみたいものだが、全然上達しなかったので説得力はない。
 体を動かせば、お腹が減る。そんなとき売店で串団子を買った。この団子がなぜか人気で、見わたすとみんなが食べていた印象がある。手ごろな値段で満腹感が得られるからだろうか。他にも食べ物はあったはずだが、プールと団子は私の中で分かちがたいものになっている。
 プールでの注意事項に、食べてすぐ泳がない、というのがある。でもどのくらい休めばいいのだろう? 完全に消化するまでは待っていられない。一分でも長く遊びたいのだ。それに消化したらまたお腹空くじゃないか。一〇分ほど形式的に休んで「もういいよね」と誰にともなく言いながらプールに飛び込んでいたが、幸い腹痛を起こすようなことはなかった。

(2016年8月・片岡 夏実)


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