レールのメロディ

 小学生のころ、江ノ電で通学するようになってすぐ、あることに気づいた。走行音が電車の型式によって違うのだ。全車両の違いを聞き分けられたわけではないが、大きく二種類あることはわかった。一般的な車両は「タタタン、タタタン」と、短い音だが、当時走っていた六〇〇系と八〇〇系の古い電車は「タタタタタタン」と音が長く続きにぎやかだった。
 これは気のせいではなく理由があったらしいことを、最近になって知った。今も当時も、ほとんどの江ノ電の車両は、二両の車両のつなぎ目で一つの台車を共有する「連接車」だ。このほうが安定がよく、揺れが少ないらしい。ところが六〇〇系や八〇〇系は、台車を共有せず、独立した車両を連結しただけだ。そのため台車が一つ多く、車輪がレールのつなぎ目を拾う回数も多くなるわけだ。
 旧式車の走行音は、音楽のように響き、頭の中でメロディになりかけた。もっとも音楽的才能が皆無な私には、それを表現する術がなかった。やがて電車の音は日常の中に埋もれて気に留まらなくなり、旧式車は引退して姿を消していった。今走っている車両の音は、私には一様に同じ音にしか聞こえない。でも、もしかすると一つひとつ走行音には個性があって、耳のいい人には聞き分けられるのかもしれない。

(2016年7月・片岡 夏実)


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