古い写真
昨秋、県立近代美術館は「鎌倉館とわたし」と題する展示のために、美術館の古い写真を募集した。開館六四周年記念との名目だったが、閉館を三カ月後に控えて追想展としての色合いが濃かった。
手元に美術館の写真はないと思い、気に留めずにいた。ところが亡父が撮った写真を別の目的で調べているとき、それは見つかった。うまい写真ではないが、珍しい雪景色の美術館が写ったものだ。残念ながら発見したのは締め切り日の夜で、応募はかなわなかった。
コラムを書くために、昔の写真が見たいと思うことがある。名所旧跡は写真集や古いガイドブックで確かめられるし、そうしたものは変化が少ない。変わりゆく街角の写真は残っていない。もっとも鎌倉に限らず、ありふれた街頭の写真は、個人では持っていても公開されることは少ないだろう。鎌倉はむしろ、そんな写真が発表される機会が多いほうかもしれない。実際ここ二、三年、昔の日常風景を収めた写真集が、いくつか出版されている。きっと寺社などの写真があふれているから、それと比較してしまうのだ。
これを機に、父や自分が昔撮った写真も、整理して見直してみようかと少し思った。たとえ下手な写真でも、撮ったときには意図しなかった意味を持つようになっているかもしれないから。
(2016年2月・片岡 夏実)
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