モノレール

 まだ西鎌倉止まりだった開通して間もない湘南モノレールに、父に連れられて乗った。私が乗りたいとせがんだのか、父のほうから言い出したのかは覚えていない。二人とも西鎌倉に用事などなく、純粋にモノレールに乗りに行ったのだと思う。
 想像と違い、モノレールはレールからぶら下がっていた。羽田線のようなまたぐ型しか知らなかった私は、こんなのモノレールじゃないとさえ思った。いったん走り出すと、モノレールはぶわんぶわんと揺れながら、屋根より高いところを意外な速さで飛ぶように走った。今まで経験したことのない宙に浮いた感覚がおもしろく、先ほどの不満はたちまち消えうせた。
 西鎌倉についたのは日暮れ時だった。薄暗い中に空き地ばかりが目立つ宅地造成中の風景はもの悲しかったけれど、初めての乗り物に乗って、できたばかりの駅に降りた楽しさは、それにまさった。その後は、全線開通してから一回か二回乗ったきり、長く利用する機会はなかった。江ノ島、大船のどちらに出るにしても、私の家からでは残念だが使い勝手が悪い。
 今でも年に一、二度モノレールに乗ると、不思議な揺れをともなって加速するあいだ、非日常の世界に連れて行かれるような気持ちが少しする。日常の足に使っている沿線住民からは笑われるかもしれないが。

(2015年11月・片岡 夏実)


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