ひどい名前の植物群
数年前の秋口、二階堂で、優しげな薄桃色の花をつけた草を見つけた。花と葉の形はミゾソバに似ているが、もっと丈があり、つるが二メートルほどの高さまで伸びている。よく見ようと葉をつまんだとたん、指先に鋭い痛みが走った。茎にとげを持つ植物は珍しくないが、葉っぱにまであるものは初めてだ。
このとき、名前でしか知らなかったママコノシリヌグイという植物が、ふと頭に浮かんだ。あとで調べたら私の直感は正しかった。ひどい名前をつけたものだが、うまく特徴を捉えてはいるのかもしれない。
ひどいといえばヘクソカズラだ。葉をもむと臭いのでこの名がついたと、子どものころ図鑑で読んだ。決して触るまいという警戒心と、どんな匂いだろうという好奇心を同時に覚えたが、当時はどこに生えているかもわからなかった。
この植物は、鎌倉の至るところに自生し、夏から秋には白と赤紫色のかわいい花が咲くのですぐわかる。見分けられるようになってから、一度どんな匂いかと葉をもんでみたが、別に臭くはなかった。細かくちぎっても、普通の草より少し青臭い程度だ。これであの名前は、ひどいにもほどがあると思った。もっとも個体差や地域差があることも考えられるので、試してみてすごく臭かったという人がいたら申し訳ない。
(2015年10月・片岡 夏実)
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