アオサギ
知人のセカンドハウスが南房総にあり、たまに厄介になっている。周囲は谷戸だが、鎌倉のように家が建て込んでおらず、ほとんど田畑と湿地と山林が占めている。時たま大きな水鳥が、田んぼで餌を漁っている。羽が青みがかった灰色で、細長い首と脚を持つ優美な鳥、アオサギだ。堂々と落ち着いて見えるが、結構警戒心が強く、車で三〇メートルほどまで近づくと飛び去ってしまう。
鶴岡八幡宮にも、何年か前からアオサギが飛んできて、源氏池で餌を採っている。藤棚の前の杭がお気に入りの場所のようだ。よくここに止まって水面を見つめている。杭が立っているところから岸までは、二メートルほどしかない。休日ともなれば、大勢の観光客が休んだり、談笑したり、コイやカメに餌を放ったりする。ところがこのアオサギは動じない。珍しがってカメラを向ける人がいると、心なしか、得意げにポーズを取っているようにさえ見える。人間がすることの意味を、何もかもわかっているかのようだ。
野生動物が人慣れしてしまうのには、少し複雑な思いがあるが、そうは言っても大きな鳥を間近で見られるのはやはり楽しく、池の近くを通るとき、今日はいないだろうかと探してしまう。アオサギは、トビやカラスのように悪さをするようにはならないと思うのだが。
(2015年2月・片岡 夏実)
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