ご当地もの

 B級ご当地グルメ、ご当地キャラとご当地ものには事欠かない昨今、ご当地インクなるものまである。万年筆用のインクの色で土地の名所や名物をイメージし、それらを色名に冠したものだ。もしこれを鎌倉で作ったら、どんなものになるのか、勝手に想像してみた。
 墨痕のように黒々とした黒で寺をイメージしたい。名前は「古刹」でどうだろうか。最初「五山」と思ったのだが、それでは他の寺院に不公平だ。ブルーブラックは「十六夜」。月夜空の色に『十六夜日記』を重ねた。赤は静御前の紅の色で「静の舞」か「舞殿」、緑は深緑で「谷戸」と名付けたい。
 青は海の青にするのが順当だが、簡単なようで色味が難しい。あまり濃く鮮やかな青よりも、緑がかった色のほうが鎌倉の海らしいかもしれない。明るい青寄りの青緑。名前はどうしよう。「和賀江島」などいいんじゃないだろうか。茶色は、岩肌のような黄褐色の「切通し」をまず考えついたが、枯れたセピア色で「文士」というのも悪くない。夏目漱石が愛用したインクの色でもある。
 これで主要な色がそろい、神社、仏閣、海、山、歴史、文化と、あらゆるイメージが込められた。もちろん第二弾、第三弾を出してもいい。どこか発売しないか。アイディア料はお安くしておきますので。

(2014年12月・片岡 夏実)


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