ミョウガとヤブミョウガ

 以前「鎌倉は湿気が多いのでアジサイの生育に向いている」という説を枕にコラムを書いた。これが本当なら、ミョウガにも向いているのだろうか。
 庭の片隅にミョウガを植えたのはもう一〇年近く前だが、ずっとひと夏に五、六個しか収穫できなかった。西日が当たるからだろうか、日陰に植え直そうかと思っていたところ、去年から収穫量が増えだし、今年は畳二枚にも満たない区画から、七月だけで八〇個くらい穫れた。草木が茂ったり落ち葉が積もったりして、湿り気が増えたからだと思う。その代わり藪をかき分けて花芽を探すことになるが、多少面倒でもかえって楽しくもある。自分の庭なのに山菜採りのような気分だ。
 鎌倉の山道を歩いていると、高さ一メートルほどで濃い緑色のミョウガに似た葉を持つ草が群生しているのを見かける。このヤブミョウガも、湿気を好む植物だ。もっとも葉の形が似ているだけで、イワタバコ(これも湿っぽい岩肌に生える)がタバコでないように、ヤブミョウガはミョウガではない。
 以前、本紙編集発行人の島崎青蛙は、目の前に広がる草むらがヤブミョウガだと聞いて、「これ全部ミョウガ!?」とダイヤモンドの鉱脈でも掘り当てたように目を輝かせたが、食べられないとわかると財布を落としたような表情になっていた。

(2014年8月・片岡 夏実)


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