テレビ越しの鎌倉
先日の夕方、私の家の近所に大きなマイクロバス(形容矛盾だ)が三台も来て、大がかりなロケをやっていた。某人気ドラマの続編の撮影だ。ちょうどクライマックスの頃がアジサイシーズンと重なるので、とんでもない人出になるのではと戦々恐々としている。
ドラマは観ていないが、旅番組に鎌倉が出ると、つい観てしまう。また混雑するのかとぼやきつつ、「ルートの効率が悪い」とか「そんな短時間でどこまで移動するんだ」などと突っ込むのを結構楽しんでいる。
カメラのレンズを通すと時々、見知った場所が見たことのない風景に思えることがある。プロのカメラワークのなせる技だ。おそらく広角レンズを使って、大胆に被写体に寄って撮るからだろう。そうすると奥行きが強調されて、建物は大きく立派に、道路は広く映る。素人では気後れしてなかなかできない。
旅番組にはグルメ情報が欠かせない。何年か前ある番組に、出演者が揚げ物を買って店先で立ち食いする場面があった。そこへ突然トビが襲いかかり、女優がカメラの前でアジフライを引ったくられてしまった。この女優は画才で知られる知的なイメージの人だったが、それ以来不幸なことに、私の中で彼女は「トビにアジフライをさらわれた人」ということになっている。
(2014年5月・片岡 夏実)
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