カーニバルの歌

 七月から横須賀線鎌倉駅の発車メロディが、小学唱歌「鎌倉」になった。あくまで私の狭い観測範囲でだが、辛気くさいとすこぶる評判がよろしくない。
 鎌倉らしさを観光客にアピールするつもりなのだろうが、通勤客も駅を利用するのだ。出勤前にこんな陰鬱な曲を聴かされたら、私なら確実に労働意欲が減退する。下り電車で久里浜に出て、フェリーで房総半島に逃亡したくなると思う。せめて通勤時間帯だけでも景気よくできないものかと思っていると、ある曲が頭に浮かんできた。一九六〇年代初めまで開催されていた「鎌倉カーニバル」の歌だ。
 祭りの歌だから、テンポがよくてにぎやかで、浮き浮きした気分になる。何より、鎌倉の歴史の一ページを直に伝えている。曲調がいかにも昭和くさいのも、今ではかえって新鮮だろう。年輩の人以外あまり知らない歌かもしれないが、発車メロディだけでなく、どんどん流して流行らせればいいのだ。
 ただ、リバイバルするのはいいけれど、メロディに合わせて朝から「こんなに東京に近いのにフランスめいた夏の海」という歌詞が思い浮かぶようになったら、違う意味で労働意欲に影響しそうだ。私なら江ノ電に乗って腰越から江ノ島あたりにでも……結局、私の労働意欲が低いというだけの話だった。

「カーニバル鎌倉の歌」(菊岡久利作詞、 団伊玖磨作曲)はCD『鎌倉カーニバル』(鎌倉青年会議制作)に収録され、鎌倉中央図書館と大船図書館に所蔵されている。

(2013年8月・片岡 夏実)


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