頭上の脅威

 葛原ガ岡神社近くの広場でケーキを食べていて、トビに襲われた。目の前に音もなく現われ、顔面に激突したのだ。鼻筋から目の下にかけて爪で引っかけられ、一センチほど切られた。カミソリ並に鋭いのだろう、痛みはほとんどなかった。昔、トビと言えば高いところを悠然と飛んでいるイメージだったが、ここ十年ほどで、屋外で飲食するときの脅威になってしまった。初めは海岸だけだったのが、最近は町中でも襲ってくる。
 私が小学生くらいの頃、鎌倉のどこかで住人がトビに餌を与えているという話題が、テレビのニュースになったことがある。まだ野生動物の餌づけが問題視されていない時代のことで、ただ珍しい話として紹介されていたようだ。気持ちは少しわかる。はるか上空を飛んでいる鳥が、庭先に降りてきて餌を食べたら、楽しいだろう。そんなことの積み重ねで、トビは人の手から食べ物を取ることを覚えてしまったのだと思う。
 外で食べるときは、枝の張った木の下か、壁のようなものを背にするといいようだ。後ろから襲われる心配はなくなるし、獲物を掴んだトビはそのまままっすぐに飛び去るため、障害物があると前からも襲撃できなくなるからだ。しかし、ものを食べるのにゴルゴ13並の警戒心が必要になるとはね。

(2013年5月・片岡 夏実)


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