またまたドラマ

 鎌倉を舞台にしたテレビドラマが、去年に続き今年も放送されている。私の家の近所でもロケをやっていた。また撮影場所を見に来る観光客が増えるのだろうか。
 今回のドラマは若者向けのようだが、一年前のは出演者といいテーマといい、四、五十代がメインターゲットだった。小泉今日子に中井貴一とくれば、八〇年代に十代後半〜二十代だった層には直球ど真ん中だ。打ち返さなくてどうする。私は見逃したが。ところがこれが幅広い世代に受けたらしい。老若男女を問わずドラマを追体験しに来た人たちが、春先の鎌倉のあちこちで見られた。
 驚いたのは電車の中や路上で、それまでそんな単語を発音したことがなさそうな若い女性たちが「キョンキョンが〜」と話しているのを、何度か耳にしたことだ。二五年前にタイムスリップしたかと思った。「キョンキョンかわいい!」って、たぶん君たちのお母さんと同じくらいの歳だぞ。かわいいのか? 
 「かわいい」という語はずいぶん前から間投詞みたいなもので、大した意味はないのかもしれない。でも、小泉今日子が本来の意味でかわいいと言われていた頃を知る身としては、それはどのようなニュアンスなのかと、問いつめたいような気持ちに一瞬なったのだった。

(2013年3月・片岡 夏実)


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