コイ、ハト、カメ、カモ

 鶴岡八幡宮の源氏池のほとりにある売店では、鯉の餌を売っている。日本中どこでも見られる光景だが、考えると妙な話だ。自分が飼っているわけでもない動物に、わざわざ買ってまで餌を与えたくなる心理はどこから来るのだろう。野生動物を手なずけて家畜化した太古の記憶の名残だろうか。もっと単純に、支配欲が満たされるからかもしれない。俺の杯を受けた、みたいなものか。
 昔は鳩の豆というのを売っていたが、今は見かけない。それどころか鳩に餌をやるなという掲示まである。いずれにしても鳩は不人気で、鯉の餌をついばもうとしては追い払われている。鳩といえば、はちまんさんの象徴のはずなのに、あんな邪険にしていいのだろうか。
 池には鯉だけでなく亀もいる。こちらのほうが人気があって、みんな亀のいるほうに餌を放るが、動きが鈍くもたもたしているうちに鯉が掃除機のような口で吸い込んでしまうことが多い。たまに見かけるスッポンは、なかなかうまいことをやっている。人が投げる餌を食べつつ、餌に寄ってきた小魚も狙っているのだ。
 六月の初め頃に行ったときには、カルガモの親子がいて、人気を独占していた。鳩の扱いはいつも通りで、同じ鳥なのにとこの世の不条理を少し感じた。

(2012年7月・片岡 夏実)


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