ドラマ

 テレビドラマの撮影で近所がざわついている。観たことがないのだが、極楽寺近辺が舞台のようだ。撮影に入る前、家のポストに「お騒がせします」という旨の通知が入っていた。前に別の局がロケをしたときには、一緒にロゴ入りタオルが配られたので、今度はケチだと陰口を叩いたら、聞こえたわけではないだろうが、犬がプリントされたかわいいタオルをくれた。ちょっと申し訳ない気分だ。
 長谷に住んでいた小学生の頃、ある時から極楽寺への道を尋ねられることが増えた。それがやはり極楽寺が舞台のドラマ『俺たちの朝』の影響だったことは、もうひとつの影響とともに、あとで知った。
 今では考えられないことだが、当時江ノ電は利用者が減り、廃線が取りざたされていた。この中村雅俊主演のドラマがヒットしたことで、極楽寺は一躍名所となり、若者を中心に多くの人が訪れるようになった。おかげで乗客数が増え、江ノ電は危機を脱したという。
 新しいドラマの効果か、極楽寺の駅舎をバックに写真を撮る観光客を最近よく見かける。だが江ノ電の経営状況を変えたほどの往時の賑わいは、もっと大変なものだったのだろう。一度見ておきたかった気もするが、今そんなものを再現されるのは、少し困る。

(2012年3月・片岡 夏実)


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