歳の市

 長谷観音の参道に引っ越して初めての年末のある日、家の前の道にずらりと露店が並んだ。それまでにも休日には店が出ることがあった。でも食べ物屋やおもちゃ屋、だるまや神棚のような縁起物など、これほど多彩な店が並ぶのは初めてだった。家の前でお祭りが始まったようだ。実際そうだった。師走一八日は一年で最後の縁日「納めの観音」で、参道には「歳の市」が立つのだ。私はそれほど祭り好きでもないが、年に一度家のまわりが賑やかになるのは悪くなかった。
 三年ほどで余所へ越してからも、歳の市には気が向くと行っているが、年ごとに人出も露店も閑散としていく感じがする。寒いこともあり気が滅入って、そそくさと一回りするだけで、買い物もせずに帰ってしまう。たまたま自分の行く時間帯だけかとも思った。しかし近所の人に聞くと、やはり昔に比べて活気がなくなったという。
 こういう行事には、もうみんな足を向けないのだろうか。でも光明寺のお十夜や本覚寺の十日えびすはとても賑やかだ。これらのように歳の市にも、露店で買ったものを食べ、酒やビールが呑めるスペースが欲しい。そうすれば自然に人が集まり、活気を増し、さらに人を呼ぶだろう。そんな場所があれば、私は半時間くらい居座りたい。

(2011年12月・片岡 夏実)


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