ひねもすのたり

 晴れて風の凪いだ春先の海は澄んで水がぬるく、波音もどこかのんびりしている。そんな季節の磯で、奇妙なものや楽しいものに出会った。
 小学校五年生の春休み、何人かの友達とワカメ拾いに行こうという話になり、滑川の河口から材木座海岸を歩いた。和賀江島の石碑まで来ると、一面に打ち上げられた海藻に混ざって、薄黄色いひもが絡み合ったようなものが無数に落ちている。大きさも形も色もラーメンの玉そっくりだ。製麺所のトラックが近所で横転事故でも起こしたのだろうか。
 詮索しても始まらないので、流木を集めて焚き火をし(今では禁止されているかもしれない)、弁当を広げた。みんなは岩場で貝を獲ってきて、焼いて食べた。私は貝アレルギーなので見ているだけだったが、ちょっとワイルドでわくわくした。素潜りをしていた大人がこの様子を見ていて、子どもが何やら面白いことをしていると思ったのだろう、突いたばかりの魚をくれた。白地に黒い縦縞が入った二〇センチほどの魚、たぶんシマイサキだ。焼くと癖のない白身で美味しかった。
 和賀江島で見たラーメン玉の正体はウミウシの一種のアメフラシの卵だと、かなりあとになって知った。

(2011年3月・片岡 夏実)


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