凍る鎌倉

 ここ十何年か暖冬の年が増えているようだ。鎌倉はもともと暖かい土地で、横須賀線の北鎌倉のトンネルを境に気候が違うなどと言われているが、それでも以前はもっと寒かった。
 小学校へは鶴岡八幡宮の中を突っ切って通っていた。冬の朝、やぶさめ道では水たまりが芯まで凍り、盛り上がったぬかるみの泥はそのままの形で固まっている。蹴っても崩れず足のほうが痛くなった。ちょっと池に寄り道すると一面の氷で、石を放り込んで穴をあけて遊びたくなる。特に寒い日には氷が割れず、小石が氷上を滑っていく。どのくらいの石まで耐えられるだろうかと、だんだんと大きな石を試して思わぬ時間を食った。氷を学校まで持って行こうという試みは、手が痛くなっていつも途中で挫折した。
 さらに昔は人が乗れるほど厚く氷が張ったという。父の中学の同級生は、歩いて源平池の島まで渡ったそうだ。ところが日が高くなると氷が薄くなり、戻れなくなってしまった。そのあとどうしたかはわからないが、ボートでも出してもらったのだろう。もう一度凍るのを待っていたら凍死してしまいそうだ。
 早朝のはちまんさんには長いこと行っていない。今年は珍しく寒い日が続くが、池は凍っているだろうか。

(2011年2月・片岡 夏実)


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