谷(やと)のお寺の鐘が鳴る
一年で一番日が短い晩秋から初冬、山に囲まれた鎌倉では特に暗くなるのが早い。入りくんだ谷の奥はなおさらだ。それでも子どもの頃は、日が落ちて友達の顔が見えなくなってきたことにも気づかず、夢中になって遊んだ。腕時計を持っている子などほとんどいなかったし、持っていたところで見やしない。帰る時刻を知らせるのは、いつもお寺の鐘だった。どこの親もたいてい「鐘が鳴ったら帰っといで」と言っていた。 (2009年11月・片岡 夏実) |
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